『王子と鴉』12話

    • 偽みゅうとによる『王子と鴉』解説。

みゅうと:王子とカラスの話は知ってる?勇敢な王子が大鴉と戦うお話。王子には信頼していた騎士がいた。でもその騎士はカラスに一太刀も浴びせる事もできずに、カラスの爪で二つに引き裂かれてしまったのさ。王子を守るなんて口先だけの役立たず。だから王子はとても苦労をしたんだ。お話から飛び出した大鴉を一人で追って、一人で封印するしかなかった。自ら、禁断の力を使ってね。そう、王子は自分で自分の心臓を、取り出したのさ。

るぅ:プリンセスチュチュの事は知ってる?プリンセスチュチュはね、王子とカラスの中にほんの数行紹介されているだけ。お話の人物でさえ誰もなりたがらなかった惨めな存在。いつの間にかお話からも置きざられた取るに足らない存在。王子に振り向いてもらえるはずもない。ただの賑やかし。かわいそうね。

    • ふぁきあ、みゅうとに『王子と鴉』を読み聞かせたことを語る。

まだガキの頃、みゅうとに『王子と鴉』の話を読み聞かせてやったとき、あいつが一番興味を示したのは、自分のことでも大鴉のことでもなくて、ほんの少ししか書かれていないチュチュのことだったんだ。チュチュが光の粒になって消えてしまうっていうくだりを何度も何度も聞きたがった。心を取り戻したいって思うようになったのは、きっと返してくれるのがチュチュだからだ。

「ほんの数行紹介されているだけ」には、「チュチュが(愛を告げて)光の粒になって消えてしまうくだり」が書かれているのか。
プリンセスチュチュは『王子と鴉』のなかで「ふぁきあ:光の粒になって消えてしまう」のであれば、「クレール:いつの間にかお話からも置きざられた」というのはおかしい。《プリンセスチュチュ》のキャラクターは『王子と鴉』の中で完結しているはず。
プリンセスチュチュが心を返す」という設定は、『王子と鴉』《市販本》には書かれておらず、ドロッセルマイヤーの死後、王子と鴉が物語から飛び出し、鴉が封印され、王子も眠りについてからの「付け加えられたお話」(しかし、お話の中のプリンセスチュチュ自身は、『王子と鴉』の中で既に消え去っているので、何らかの形で復活しなければ存在しえないはず。)

あひる:でも、みゅうとは自分で心を取り出したって……。誰かを……小さくて弱いものを守る。それがみゅうとの一番の願いなんだ。そのためなら、自分のことなどかえりみない。心を失ってもそのことだけは忘れなかった。そういう奴なんだよ。