『王子と鴉』3話

    • アバン

昔々、一人の男が死にました。
お話は途切れて、王子は心臓と一緒に、人々に向ける優しい気持ちも 勇敢に戦った思い出も失くしてしまいました。
そして町中に散らばった王子の心臓のかけらは行き場を求めて、隙間の空いた心に住み着きました。
かけらに取り付かれた人々の中には、自分自身の物語を狂わせてしまう者もありました。

    • ぴけとりりえが『王子と鴉』について語る。

あひる:あー…えっと…あ、そう、夢 夢の話なんだけど!すっごくかっこよくて強い王子様が居てね、でも王子様は悪い大鴉と戦ってて、心臓を砕けば大鴉を封じられるんだけど、心臓が無くなっちゃうと心も無くなっちゃって、王子様はいつも寂しい目をしてて、その王子様をあたしが…。
りりえ:王子と鴉のパクリね。

ぴけとりりえが知る『王子と鴉』には、「心を無くした王子」まで含まれているのか。

ぴけ:ホラ、この本でしょ?
ドロッセルマイヤー:「王子様は悪魔や大鴉と戦った勇者だ。私の書いたお話の中に居た時ぁね。」

ドロッセルマイヤーが書いたお話の中にいたときは、「勇者」だった王子様。

あひる:…あの、このお話を書いた人って、何てひと?
ぴけ:え?ドロッセルマイヤーよ?常識じゃん。
あひる:ああ!あのさぁ!ドロッセルマイヤーさんって、この町に住んでるの…?
ぴけ:もう大昔に死んでるよ。
りりえ:お話も、途中で終わってるのよね。
ぴけ:そうそう。確か本書いてる途中で死んだんじゃなぁい?
ドロッセルマイヤー:「そう、彼はお話から出て大鴉を封じる為に心臓を失った」

「お話」には「心を無くした王子」は含まれていない?

あひる:お話を書いてた人が死んで、お話の中の人が出てきたってこと?そんな不思議なことって…。
あ、全部鳥のアヒルが人間になるよりは不思議じゃないのかも。(※)
そっかぁ…。みゅうと先輩はお話の中の王子様なのかぁ…。

    • あひる、ふぁきあに『王子と鴉』について尋ねる。

あひる:あの、王子と鴉ってお話、知ってますか?
ふぁきあ:それがどうした。
あひる:いや、ど どうと言われるとぉ…。
ふぁきあ:フン。子供騙しの物語だ。

ふぁきあ:何があった?
みゅうと:プリンセスチュチュが…。彼女が僕に触れていった…。
ふぁきあ:プリンセスチュチュ…?
るぅ:馬鹿馬鹿しい。あんなのお話じゃない。
あひる:え、チュチュは、お話? でも、あたし、あひる…。
るぅ:美貌と賢さと強さは授けられたけど、ただ一つ、王子様とは結ばれない運命を背負ったお姫様。告白したとたん、光の粒になって消えちゃうのよ。

るぅがこの時点で語る「プリンセスチュチュ」の設定に「心を返す」ことは含まれていない。

あひる:何がお話? 何が本当? チュチュはあたしで、あたしはあひるで…。でも、チュチュは、チュチュは…。

プリンセスチュチュは悲劇のお姫様、お話はいつもめでたしめでたしとは限らない。はっはっはっは…。